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「出発点―1979~1996」宮崎駿

エッセイ
04 /13 2019


私は宮崎駿のファンというほどでは無いと思います。
しかし、映画版「ナウシカ」をリアルタイムで映画館で鑑賞したときの衝撃は今でも忘れておらず、その後は漫画版を完結まで読み続けました。
その後、宮崎駿は国民的アニメーション映画監督としての地位を確立しましたが、私としては「紅の豚」以降の作品にそれほど興味が無くなってしまい、宮崎駿が持て囃されるのと反比例して、気持ちは離れていったような気がします。
もちろん、映画ファンとしてほとんどの作品は鑑賞していますが。

本書は、twitterで流れて来たツイートがきっかけで手に取りました。
その内容は、宮崎駿が書いたという「耳をすませば」の企画書についての一文でした。

「現実をぶっ飛ばすほどの力のあるすこやかさ…。その試みの核に、柊あおいの「耳をすませば」はなり得るのではないか?」(P417)

「耳をすませば」は、正直キラキラしすぎてて眩しいくらいの映画で苦手だったのですが、なんとそれは宮崎駿の魂胆だったのか、そして企画書そのものが一つの文章として抜群に面白い。この映画を見て見たい!と思わせる企画書でした。

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映画 『ちいさな独裁者』 (ドイツ/2017)

映画
03 /26 2019


 年に何本のナチスドイツがテーマの映画が公開されているのか知りませんが、少なくとも数十本以上の映画が毎年公開されているのではないでしょうか。

 本作 『ちいさな独裁者』もその1本です。最近の傾向として、戦後70年以上経たこともあり、今まで「ナチスドイツに巻き込まれただけ」と言っていた立場の人の告白、または告発的な内容の映画も増えました。
例えば映画『ゲッベルスと私』では、ゲッベルスの秘書であった女性が当時を振り返って告白するのですが、終始一貫「なにも知らなかった。私に罪はない」と彼女は答えます。本当にそうだったのかは疑わしいですが、このような加害者側の視点は、長い月日を経てようやく証言出来る時代になったということだと思います。

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「苦海浄土」石牟礼道子

世界文学全集 第3集 感想
05 /03 2016



 読み終わるのに随分と時間を費やしました。そのボリューム(2段組、800p弱!)や、内容の重さ、作者がこの作品にかけた40年近くの歳月を思えば、読み手にも覚悟が必要な本です。
「苦海浄土」は文庫本でも出版されていますが、続編と言える第二部「神々の村」第三部「天の魚」は収録されていません。しかし「苦海浄土 池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集」では、第三部まで収録されているので、まとめて読むことが出来ます。

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「お菓子とビール」サマセット・モーム

海外翻訳小説
11 /19 2015


「人間の絆」「月と六ペンス」などで有名なイギリスの作家サマセット・モームは、一時期日本の書店から著作を見かけなくなりました。ですが、最近は新訳が多く出版され手にとりやすくなりました。本書も2011年に岩波文庫から出版されたものです。

 印象的なタイトルは、シェイクスピアの「十二夜」などに出てくる言葉で、「人生を楽しくするもの」「人生の愉楽」というような意味合いがあるのだそう。
物語は主人公アシェンデンが、過去に親しかったドリッフィールドという作家との過去を回想するというものですが、ドリッフィールドの妻、ロウジーと主人公の恋愛関係が主軸となっています。ロウジーは魅力的な女性で、まだ子供だったアシェンデンは翻弄されてしまいます。

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「戦争画リターンズ」平山周吉

美術・映画
09 /12 2015



 藤田嗣治といえば、乳白色に輝く女性の裸体画というイメージ、またはあの強烈な自画像などを思い浮かべる人が大半だと思います。
1920年代、フランスで成功した藤田嗣治は今でも人気のある画家です。しかし、太平洋戦争の間に描いた戦争画について語られることはあまりありません。
藤田嗣治はなぜ成功したフランスから日本に帰ってきて、戦争画を描いたのか。そして藤田の描いた戦争画の中でも名作と言われる「アッツ島玉砕」に関わった人や、アッツ島そのものに関わった人、またアッツ島の花々を写した写真家まで網羅したのが本書です。

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「複眼の映像」橋本忍

美術・映画
08 /27 2015



「橋本忍」という名前は、日本の名作映画を見たことがあれば、一度は目にしたことのある名前だと思います。
「羅生門」「七人の侍」「生きる」などの黒澤明作品、「私は貝になりたい」で監督デビュー、自らプロダクションを立ち上げ制作した「砂の器」「八甲田山」、他にも「切腹」「日本の一番長い日」「白い巨塔」、「ゼロの焦点」…これだけの名作を手がけた脚本家が他にいるでしょうか?まさに不世出の脚本家といっていいでしょう。

 本書は副題に「私と黒澤明」とあるように、名脚本家、橋本忍が黒澤明と手がけた作品を中心に、共同脚本をどのように執筆したのか、仕事で過ごした黒澤明との思い出を中心に語った自伝です。

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「夜間飛行」サン=テグジュペリ

海外翻訳小説
07 /12 2015



「人間の生命に価値はないかもしれない。僕らは常に、何か人間の生命以上に価値のあるものが存在するかのように行為しているが、しからばそれは何であろうか?」
(新潮文庫版 P88)




「星の王子さま」があまりにも有名すぎて、他作品の存在を忘れられがちのサン=テグジュペリですが、「夜間飛行」はそのタイトルの格好良さからも世に知られた、しかし隠れた名作だと思います。
処女作「南方郵便機」の次に書かれた本作はフランスの文学賞フェミナ賞を受賞し、テグジュペリは作家としての地位を確立しました。
そして同時期にテグジュペリは念願の航空会社でパイロットとして働いてもおり、幼少期からの夢を叶えていました。1903年にライト兄弟が初飛行に成功し、その三年前にうまれたテグジュペリはまさに飛行機の歴史とともに歩んだ人生でもありました。

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「信仰が人を殺すとき」

ノンフィクション
09 /06 2014







クラカワーの本は「荒野へ」を読んだことがあって、この本も興味がありました。単行本しかなかったので見送っていたのですが、文庫化ということで購入しました。
「信仰」という言葉がタイトルに入ってますが、この本での信仰とは「モルモン教」をさしています。本書は1984年に起きたモルモン教原理主義者、ラファティ兄弟による母子殺害事件について描いています。被害者である母親はラファティ兄弟の義理の妹、子供はまだ赤ちゃんで彼らにとっては姪。ラファティ兄弟は残酷な手法で母子を殺し、殺人罪で逮捕され一人は死刑になりました。なぜ彼らは親族でもある母子を殺したのか。そのことを説明するにはモルモン教の初期から説明しなくてはならないと作者は考え、そもそもモルモン教とはどのようにアメリカで成立したのか、という話を殺人事件と平行して語ります。モルモン教について知識のない日本人にはどういう宗教なのか知ることのできる1冊になっています。

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箱の中の情念「ジョゼフ・コーネル — 箱の中のユートピア」

美術・映画
08 /19 2013
ジョゼフ・コーネル — 箱の中のユートピア
デボラ ソロモン 林 寿美
4560081093



 美しくもかわいらしい「箱」の芸術家として、コーネルは日本でも人気ある作家(だと思う)ですが、その人となりや生涯はあまり知られていないと思います。
私もコーネルの作品は知っていたしファンでもありましたが、作家がどういう人か興味を持ったことはありませんでした。
本書はそんな知られざる作家、コーネルの伝記の決定版といっても過言ではないでしょう。

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歴史という個人的体験「HHhH」

海外翻訳小説
07 /17 2013
HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)
ローラン・ビネ 高橋 啓
4488016553


いきなりですが司馬遼太郎風にこの本のあらすじ。

「この物語の主人公は、あるいはプラハそのものかもしれないが、ともかくもわれわれは二人の人物のあとを追わなければならない、そのうちの一人はチェコ人クビシュ、もうひとりはスロヴァキア人ガブチークであった。彼らが「金髪の野獣」と恐れられたナチスドイツの幹部、ハイドリヒを暗殺することになるとはまだ知る由もない…」
単に「坂の上の雲」引き写しです、すいません…。

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「すばらしい新世界」は天国か地獄か

海外翻訳小説
07 /04 2013
すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)
オルダス ハクスリー Aldous Huxley
4334752721


 いわゆる「ディストピア小説」の代表作ということで読んでみました。新訳も出たし。

これまた有名なオーウェルの「1984」は極度に管理された全体主義国家で、うわーやだなーこんな世界…と誰もが思いますが、「すばらしい新世界」で描かれる世界は、1つ1つの要素は悪くないのです。

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巨大戦艦モノ2冊「戦艦大和ノ最期」「軍艦武蔵」

ノンフィクション
05 /27 2013
戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)
吉田 満 鶴見 俊輔
4061962876


 今年の春から「宇宙戦艦ヤマト」が「宇宙戦艦ヤマト2199」というタイトルでリメイク、放送されています。
懐かしいな〜と見てたらふと、そういえば「戦艦大和ノ最期」を積んだまま読んでなかったことを思い出し、手にとってみました。

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ぎんこ

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