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「暗夜/戦争の悲しみ」感想
2009 / 10 / 03 ( Sat )
「暗夜」 幻想的な短編集。 もしかすると色々な隠喩があるのかもしれないが、正直わからない部分が多かった。 あえていうなら、一番はじめの短編「阿梅、ある太陽の日の愁い」が面白かった。 「戦争の悲しみ」 ベトナム戦争の話は映画やら小説やらで見たり読んだりしているけど、よく考えれば全部アメリカ側から書いたものだった。 テーマは反戦だとしても、ベトナム人が見た戦争とは当然違う。アメリカ人とは違い、自分の国で戦っているわけだし、同じベトナム人でもいろんな立場の人間がいる。 たとえば、仏教徒が多いベトナムだが、カソリックを信じる人たちも存在し、彼らはフランス人に味方していてサイゴン政権の支柱となった。 宗教でいえば、ベトナムには日本でいうところの「神道」に近いものがあり、かまどの神様は女神で、複数の夫を持っている…などなど、興味深い逸話が多かった。こういった話は、自国民でなければ描けないし、ベトナム人の死生観や風習などを知らなければ、戦争の本質をも理解したとは言えないだろう。 主人公、キエンは高校生だったが、戦争に行き、悲惨な戦闘を体験する。その描写は凄惨で圧倒される。兵士たちは戦闘だけで死ぬのではない。恐怖のあまり気が狂ってしまったり、死にきれずに「殺してくれ」と仲間に頼むが、仲間はとどめをさせずに、もっと悲惨な死に方をさせてしまう。 キエンは戦争で生き残ることが出来たのだが、日常にあっさり帰ることは出来ない。そして彼の恋人である、美しい女性フォンも、戦争によって心にも体にも傷を負い、仲の良い恋人だった2人の仲を悲劇が引き裂いていく。 恋愛の部分だけとってみれば、村上春樹の小説のようでもあり、日本の読者にも読みやすいと思う。フォンも美しく、しかも気が強くヒロインとして魅力的。 だが、戦争で女性たちも傷つけられていく。フォンだけでなく、様々な女性が時に殺され、時に精神をも傷つけられていく。 ベトナムは今、ようやく戦争から立ち直り、豊かになってきたようだ。若い世代の文学をもっと読んでみたいと思った。(2009.10.03) |
NHKで「世界文学全集」特集
2009 / 09 / 24 ( Thu ) NHK「知る楽」にて10〜11月、8週連続で「世界文学全集」特集
放 送:10〜11月の毎週月曜日 22:25〜22:50 再放送:翌週月曜日 05:00〜06:00 放送局:NHK教育テレビ 番組名:「知る楽 SHIRURAKU」 テーマ:「池澤夏樹の世界文学ワンダーランド」 第1回 世界文学とは何か……10月5日放送 第2回 恋はサスペンス――『マイトレイ』……10月12日放送 第3回 名作を裏返す――『サルガッソーの広い海』……10月19日放送 第4回 野蛮の幸せ――『フライデーあるいは太平洋の冥界』……10月26日放送 第5回 戦争は文学を生む――『戦争の悲しみ』……11月2日放送 第6回 アメリカを相対化する――『老いぼれグリンゴ』……11月9日放送 第7回 アメリカ化する世界――『クーデタ』……11月16日放送 第8回 さまよえる良心――『アメリカの鳥』……11月23日放送 やばい、読んでない作品が多い。 録画しておきます! |
発売日変更のお知らせ
2009 / 09 / 24 ( Thu ) 「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」発売日変更のお知らせ
この全集の中でも、楽しみにしていた方も多いはず…。 ナボコフの『賜物』。 そのほか3作が諸事情により、発売延期になったそうです…。 『ヴァインランド』 2009年12月10日頃 『ブリキの太鼓』 2010年4月20日頃 『賜物』 2010年6月 第3集 2010年7月刊行開始予定 の予定だそうです。 『ブリキの太鼓』も新訳だったのに…。ちょっとショック。 |
「暗夜/戦争の悲しみ」その2
2009 / 09 / 17 ( Thu ) |
「暗夜/戦争の悲しみ」その1
2009 / 09 / 09 ( Wed )
第1期で唯一読んでなかったので、ようやくとりかかりました。 えーっと、「暗夜」は読み終わりましたが… 正直、よくわかりませんでした。 あえていうなら、一番最初の短編は良かったと思いますが…。 こういう幻想的な話は、好みが分かれるような気がします。 |
「精霊たちの家」感想
2009 / 09 / 07 ( Mon )
傑作と名高い本書だが、評判通りの面白さだった。 よけいなこと考えず、ひたすらにページを捲ることだけに没頭できる、物語のもつ力をひしひしと感じる本。とにかく圧倒される、濃い物語だった。 物語は、クラーラ、その娘ブランカ、クラーラの孫アルバという女系を縦軸に、そしてエステーバン・トゥルエバという男が彼女らの夫、父、祖父として関わっていく。100年にわたる時間をかけて一族の運命を、時に孫アルバが、時にトゥルエバが語る壮大な物語だ。家族の物語でもあるが、舞台となった南米の国(チリがモデル)の近代化への歴史でもあり、20世紀という激動の時代を人々がたどる物語にもなっている。 南米の小説はよく「マジック・リアリズム」という言葉で表現されるが、この小説も現実と幻想との間を行き来する。クラーラはいわゆる千里眼・超能力の持ち主で、予言をしたり手を使わずに物を動かしたりする不思議な魅力を持つ美女。モデルは作者の祖母だという。クラーラは20世紀初頭のまだ無垢な時代の象徴でもあり、家を守る女神のようでもあり、死後も家族を見守っていく大きな存在だ。 彼女の血をひく娘ブランカ、孫アルバは、国の政治による混乱や、社会主義という時代の変化に巻き込まれていき、ブランカは身分違いの恋に苦しみ、アルバはクーデターによって混乱する情勢に巻き込まれ、一族の宿命に苦しめられていく。 作者、アジェンテの叔父はチリ共和国第29代大統領サルバドール・アジェンデであり、この物語の中で描かれる大統領と同じく、クーデターで殺害されている。アジェンテ自身も迫害され、国を追われベネズエラに亡命した。この物語も、国を追われた異邦人として亡霊をしずめるかのように書き上げたそうだ。亡命先で名作を書き上げたといえば、「レ・ミゼラブル」を書いたユゴーも、フランスから亡命し、ひたすらパリを思ってあの物語を書いたそうで、祖国の外から故郷を思う気持ちというのは、とても強く、かつ祖国を客観的にとらえることができるのかもしれない。 作者の思い、そしてクラーラ、アルバの思いが語られる最後は感動的だ。死ぬのはあたりまえ、生きていることこそが奇跡、今も人知れず苦しむ人のために、生きて書き残せ…と孫に語るクラーラの言葉は、作者がこの物語を書いた動機そのものであり、作者の一族、その時代に生きた人々の証なのだろう。(2009.09.06) |
「精霊たちの家」その3
2009 / 08 / 31 ( Mon ) |
「アメリカの鳥」発売
2009 / 08 / 19 ( Wed ) |
「精霊たちの家」その2
2009 / 08 / 11 ( Tue ) |
「精霊たちの家」その1
2009 / 08 / 10 ( Mon ) |
「フライデーあるいは太平洋の冥界/黄金探索者」発売
2009 / 04 / 16 ( Thu )
「フライデーあるいは太平洋の冥界/黄金探索者」が発売されました。 ノーベル文学賞を受賞したル・クレジオですねー。 トゥルニエは「魔王」を読んだことがあります。 なかなかしぶいセレクションになってます。 |
「失踪者/カッサンドラ」その2
2009 / 04 / 12 ( Sun )
「カッサンドラ」読了しました。というかしてました。 この小説はギリシャ神話がベースになってまして、カッサンドラはあの有名な「トロイの木馬」のエピソードにも出てくるトロイの王女です。未来が見える力を持ちますが、誰も信じてくれないので苦しむ…という設定です。 で、この小説「カッサンドラ」はひたすらカッサンドラが語ってます。 思苦しい小説です。カッサンドラはこの後、自分が死ぬことを知っていますが、死ぬべき場所の入り口に立って、自分の過去を回想し語ります。 「ホメロス」での英雄アキレウスを、カッサンドラは「ひどい男」と言う。ホメロスでは英雄とたたえられても、滅ぼされる女からみれば、ひどい男としか言いようがない。 (ま、ホメロス読んでもとんでもねーな、って思いますけど。神とのハーフだし?) 女から見た歴史の裏側とも言えるかなあ。 そして、私がこの小説を読むのが辛かったのは、女のやな所が出てくるから。 嫌といっても、女が嫉妬深いとか、そういうことではない。 戦争で負けるとき、男たちも殺されるが女は殺される前にひどいことをされてしまう。 女としての尊厳、それは戦争時ではもっとも軽んじられる。 作者は戦争末期のドイツにいたそうで、戦争でのひどい出来事を見たり聞いたりしたのだろうな。だから、この物語にはギリシャ神話の底抜けの明るさや人間臭さはない。 作者は明らかにこの物語に現代の戦争を投影している。 そして、女にとっての男への愛や貞節、女同士の感情も神話の登場人物に重ねて語られていく。 最後にカッサンドラは決断をし、死を受け入れる。英雄などはいらない、戦争に英雄などはいない。今まで運命に逆らおうともがいたカッサンドラは、最後の最後に運命に勝ったように見えるラストは、悲しくもどこか清々しい。 |

































