レッシングは銀行員の娘として生まれ、各国を転々としたようです。3歳のころ南ローデシア(現ジンバブエ)に移り住み、幼少期から成人期までをアフリカで過ごしました。当時はまだ人種差別が激しいころで、白人が黒人を支配するのは当然とされていた時代だと思います。この短篇集で描かれるアフリカも白人がヨーロッパなどからアフリカに移住し、そこで繰り広げられる白人と黒人の壁、男女の壁、古い入植者と新しい入植者のすれ違い、さまざまな越えがたい壁を持つ人々を時に冷静に、かつ暖かく描写しています。特に丁寧に描写されるアフリカの風景は日本の小説では味わえない部分です。
「老首長ムシュランガ」は、白人の少女が住む土地に現れるムシュランガという首長の話です。首長は広い土地を支配していたのですが、今は白人に取って代わられており、跡継ぎも白人の家で召使いとして働いています。しかし首長には不思議な威厳があり、白人の少女は彼に興味を持つのですが。人間の尊厳について考えさせられます。
「リトル・テンビ」は、黒人の面倒を積極的に見る女性が、テンビという黒人の子供を特にかわいがっていたのですが、成長するにつれ図々しい態度を見せるテンビに距離を置くようになります。レッシングの「破壊者ベンの誕生」を思い出させる、大人と子供のディスコミュニケーションを描いた作品です。
他にも、移住してきた白人同士のいさかいを書いた「デ・ヴェット夫妻がクルーフ農場にやってくる」「ハイランド牛の棲む家」や、白人男性と現地人女性の関係を書いた「レパート・ジョージ」「アリ塚」なども面白かったです。
アフリカを舞台にした短編ばっかりなので、まとめて読むと疲れますが、粒ぞろいの短篇集でした。読んでよかったです。(2012.03.28)
-- c l o s e