「ハワーズ・エンド」感想
2008 / 06 / 16 ( Mon )
この小説の中心にあるのは、タイトルにもあるように「ハワーズ・エンド」邸だ。 登場人物はそれぞれに、生活の基準が違ったり、もっと現実的に身分の差、収入の差があったりと違う世界に住んでいるのだが、ハワーズ・エンド邸がそれぞれを結びつけていき、その関係の中で悲劇やドラマが生まれていく。 物語の舞台となるのはイギリス。時代は第一次世界大戦前ぐらいだろう。イギリスは大国としてまだ力を持ち、特権階級は安定した生活を送るのが当然だと思っている。しかし、世界は徐々に変化を見せており、文化的な思想を持つ主人公マーガレットは時代の変化を感じとって、進歩的な女性たちと討論を楽しむ生活。ところが彼女の妹が突然恋に落ちたという手紙を送ってきてから、マーガレットの家族と、ハワーズ・エンド邸の持ち主であるウィルコックス家との奇妙な関係が始まる。 そしてもう一組の家族がこの物語に深く関わる。レオナードという男とその妻だ。レオナードはマーガレットよりも低い身分であり、財産も持っていないが、マーガレット達の文化的な会話に憧れている。しかし、この時代のイギリスは(今もそうらしいが)厳格な階級社会であり、階級という壁を乗り越えて結びつくことは出来ない。レオナードの存在は物語に大きな影響を与え、階級社会のまねく悲劇を彼は演じることになる。それはこの時代の後に大きく社会を揺るがすであろう、マーガレットも予感している貴族社会の崩壊、民主主義の台頭を象徴しているのかもしれない。 物語の中心にあるハワーズ・エンド邸だが、意外にも物語の中で出てくるシーンはさほど多くない。だが、ウィルコックス夫人やマーガレットの妹の語るハワーズ・エンド邸や、マーガレット自身が訪れて家の中を歩く描写は読者に強い印象を残すし、私もまるでハワーズ・エンド邸に行ったような気持ちになった。この物語の中では、女性たちの方がしっかり自分の世界を持っているが、このハワーズ・エンド邸を精神的に支配するのもウィルコックス夫人やマーガレットたちだ。男たちが支配する家は財産としてだが、女性たちが支配する家とは精神であり、その支配は永遠なのかもしれない。 |
「ハワーズ・エンド」その2
2008 / 06 / 10 ( Tue ) |
「ハワーズ・エンド」その1
2008 / 05 / 18 ( Sun ) |
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