「楽園への道」感想
2008 / 01 / 30 ( Wed )
楽園への道 (世界文学全集 1-2)楽園への道 (世界文学全集 1-2)
(2008/01/10)
マリオ・バルガス=リョサ

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 画家ゴーギャンは日本でも有名だが、その祖母フローラ・トリスタンのことはあまり知られていないと思う。フローラ・トリスタンという名前は「花」と「悲しみ」という意味だそうで、彼女は名前の通り美しい女性だった。そして「スカートをはいた扇動者」と呼ばれた革命家だった。あの画家ゴーギャンの祖母が革命家だった、それだけでも十分に面白い題材だ。
 
 この個性的な祖母と孫の人生をペルー出身のバルガズ=リョサは熱く激しく描き出す。ゴーギャンが4歳の時にフローラは41歳で亡くなっているので、実際2人は会ったことはない。この作品では、作者は2人の人生を交互に描き、時間も現在と過去を自由に行き来し、結果2人の全生涯を語るという手法になっている。
 
 革命家としてフランス地方を巡るフローラは、貧乏人から搾取する実業家や、カトリックの神父、無知で搾取されるがままの労働者、そして男の半分以下の賃金しかもらえない女たちのために激しく戦う。そんな彼女には実は結婚歴があり、夫に殺されそうになった過去があった。19世紀のフランスでは、女性は男性の所有物であり、どんなに夫に問題があろうと出ていった女性は淫売であり、射殺されても文句ひとつ言えない時代だった。そんな時代にフローラは、「共産党宣言」を発行するマルクスよりも早く、人間の自由と平等、そして女性の権利を訴える。
 
 一方、ゴーギャンは20代まではサラリーマンとして高い給料をもらい、幸福な家庭を築いていたのだが友人シュフネッケルの誘いで絵の世界を知り、熱中する。この物語では、彼はすでにタヒチへと渡っていて「人に言うのをはばかる病」にも侵されている(多分梅毒ではないかと思う)。ヨーロッパ文明から離れた世界にこそ楽園があると信じたゴーギャンだが、すでにタヒチもフランス人が大量に入植しており、そのタヒチの文明も次第に薄れつつあった。ゴーギャンは時に筆を置く時期もあったが、数々の女たちをモデルに傑作を生み出していく。
 
 フローラもゴーギャンも、新しい世界、楽園を目指して熱く激しく戦う人生だった。2人とも、もしかすると平和で裕福な人生が遅れたかもしれなかったのに。全く違う人生を送った祖母と孫だが、不思議とシンクロする部分もあり、作者はその部分を(たぶん創作も交えて)ドラマチックに描く。ゴーギャンの運命を変えたマネの「オランピア」、フローラの「恋人」となった「オランピア」。自分の目的のために家族を捨てたこと、そしてフローラの娘であり、ゴーギャンの母である薄幸の美女アリーヌ、若くして亡くなったゴーギャンの娘アリーヌ…などなど。
 
 この「楽園への道」というタイトルは、直訳すると「次の角の楽園(天国)」という意味。日本でいうと鬼ごっこのような遊びからつけられたそうだ。2人の求めた楽園は、天国だったのだろうか。フローラもゴーギャンも、決してこの世では実現しないものを求めていたように思える。だからこそ、なにもかも捨てても目指す価値のある「楽園」だったのかもしれない。しかしフローラは41歳という若さで倒れ、ゴーギャンも病苦の中息絶える。2人の生き方は強くまぶしい分、光の中に死という黒い影がくっきりと浮かび上がる。しかしその影こそが、ゴーギャンとフローラの物語を力強く彩っていると思う。

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22:46:52 | 02「楽園への道」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
「楽園への道」その2
2008 / 01 / 24 ( Thu )
楽園への道 (世界文学全集 1-2)楽園への道 (世界文学全集 1-2)
(2008/01/10)
マリオ・バルガス=リョサ

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 「楽園への道」読了しました。
うーんほんとに、ほんとにすごくいい小説だった!
「スカートをはいた煽動家」フローラ・トリスタンと、その孫画家ゴーギャンは、まったく接点がないし、2人は実際であったこともないのだけど、その生き方をたどることによって、様々なテーマ、人とは、男女とは、理想とは…を、熱く激しくあぶりだしていく濃い小説。ぐいぐい読ませてくれる。
「楽園への道」というタイトルですが、「楽園」というのは主人公2人にとって何だったのだろう?読了した今、いろんな考えが頭をめぐってます。最後にゴーギャンが日本でいう鬼ごっこのような遊びをしている女の子たちを見ているシーンは胸が詰まる。
「ここは楽園ですか」
「いいえお嬢さん、ここではありません。次の角へ行って訊いてください」
この小説の原題を直訳すると「次の角の楽園(天国)」なんだそうだ。

次は感想を書きます。

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00:14:28 | 02「楽園への道」 | トラックバック(0) | コメント(8) | page top↑
「楽園への道」その1
2008 / 01 / 20 ( Sun )
楽園への道 (世界文学全集 1-2)楽園への道 (世界文学全集 1-2)
(2008/01/10)
マリオ・バルガス=リョサ

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 「楽園への道」317Pまで読みました。
はっきり言わせて頂きます。
この本はかなり面白いです!気が早すぎだけど年間ベスト5には入れたい!
セレクトしてくれた池澤夏樹さんありがとう。翻訳してくれた田村さと子さんありがとう。これが未訳だったなんてもったいないです。
 
 物語は、あの有名な画家ゴーギャンと、その祖母であり革命家のフローラ・トリスタンの2人の現在と過去が交互に描かれる。2人の人生は、全く違った方向なんだけど、微妙に一致する部分があったり、2人の視点からこの一族の歴史が見えてきたり。ゴーギャンもフローラも、現在の自分を語ってると思うといきなり過去を語っていたりして、複雑な構成になっているのだけど、そこもまた面白い。
 
 久々に濃厚な読書体験させてもらってます〜。おすすめします。

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22:35:22 | 02「楽園への道」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
久しぶりの更新。
2008 / 01 / 16 ( Wed )
楽園への道 (世界文学全集 1-2)楽園への道 (世界文学全集 1-2)
(2008/01/10)
マリオ・バルガス=リョサ

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 お久しぶりの更新です。
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年もどんどん「世界文学全集」を読む“予定”ですので、よろしくお願いします。

 で、やっと出ました「楽園への道」。
「オン・ザ・ロード」の発売は11月。12月は刊行が無かったんですねー。
別にblogをさぼってたわけではありません。刊行が無かったんです!(強調)
本屋さんも2カ月ぶりだけど、忘れずにちゃんと持ってきてくれました。
 
 「楽園への道」は画家ゴーギャンと、ゴーギャンの祖母で革命家(!)のフローラ・トリスタンが主役のお話だそうで、これを聞いただけでも面白そうですねー。作者紹介を見ると、リョサってペルー大統領選に立候補したことあるんですね。びっくり。その時大統領になったのが、あのフジモリさんだそうで…。

 今回は「楽園への道」GUIDEというチラシが入っててゴーギャンと祖母フローラについて、作品について詳しく説明してあります。読んだのですが、かなり詳しく書いていて参考になりますね。だ、だけど…ネタバレというほどではないですが、これは読んで知りたかったなー、って思う部分もあった。別に気にするほどではないですけどね。これから読む方は、気をつけてください。
(ほんとたいしたことないのですが)

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23:02:50 | 02「楽園への道」 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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