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箱の中の情念「ジョゼフ・コーネル — 箱の中のユートピア」

美術・映画
08 /19 2013
ジョゼフ・コーネル — 箱の中のユートピア
デボラ ソロモン 林 寿美
4560081093



 美しくもかわいらしい「箱」の芸術家として、コーネルは日本でも人気ある作家(だと思う)ですが、その人となりや生涯はあまり知られていないと思います。
私もコーネルの作品は知っていたしファンでもありましたが、作家がどういう人か興味を持ったことはありませんでした。
本書はそんな知られざる作家、コーネルの伝記の決定版といっても過言ではないでしょう。
 図版は大変少ないので(しかもモノクロ)コーネルの作品を全くみたことのない人には、ちょっととっつきにくいかもしれません。しかし、コーネルの親がどのような家に生まれたのか、兄弟は何人いたのか、そういったコーネルの人生の始まりから著者は調べあげてます。するとコーネルは早くして父を失い、家長としての責任感があったこと、障害を持つ弟をかわいがったこと、母親の愛情を大事にする一方、本人の女性関係に影響を与えるほどの束縛があったこと、など、作品に直接関係はないかもしれませんが、作風の裏にあるコーネルの情念が伺えます。

 生涯結婚しなかった上に、女性と深い関係を結ぶことが出来なかったコーネルは、その一方様々な女性、特にバレリーナや女優に空想の愛情を捧げ、彼女らにインスピレーションを受け作品を作っていました。さらにファンになると作品を送ったりもしていたそうです。
また、晩年になるともっと身近な女性にも同じ事をしていたようです。ある娘はレストランのウェイトレスであったり、助手であったり、若い芸術家であったり。その中には日本の芸術家、草間彌生もいました。当時野心あふれる若者だった草間彌生は、コーネルを尊敬していたようですが、作品をねだるなどおもいっきり利用したんじゃないかと思います。まあ草間彌生にかぎらず他の女性も似たようなものでしたが…。
コーネルにも問題があったのでしょうが(女性を偶像化しすぎたんでしょう)、彼にもっと寄り添う女性がいればなあと思わずにはいられません。 しかし、そういった女性への思いも、彼の作品の一部であることは間違いないのです。

 コーネルがもし現代の日本に生きていたら、インターネットで架空の人格を作り上げ、初音ミクで作曲したりAKBの画像を編集したり、ポップカルチャー的なアーティストになっていたかも…
もちろん偉大な芸術家なのですが、孤独で女性とうまく関われない、家族を大事にし、純粋な心を持ち続ける男というのは、時代を問わずどこにでもいるタイプだと思います。そのある意味ダメなところが、美しい箱の繊細さにつながっているのかもしれません。

 本書の作者は女性なのでしょうか、私見ながら女性に対してちょっと厳しい視点を持っているような気がしました。(2013.08.11)

ぎんこ

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